葛飾北斎《凱風快晴》を見た感想|二色に見えた富士山と「赤富士」の色の変化

凱風快晴 日本の名画

前回に続いて、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》から一作品を選んで見てみることにしました。

今回選んだのは《凱風快晴》です。

作品について何も調べずに最初に見たとき、浮かんだのは「二色の富士山」という印象でした。一つの山なのに、山肌が途中から色分けされているように見えます。

なぜこのような色になっているのか。まずは作品について調べず、自分の目でじっくり眺めてみました。

凱風快晴

1. まず何も調べずに作品を見てみた

作品全体を見たとき、最初に感じたのは「二色の富士山」でした。

一つの富士山が、途中から違う色に分かれているように見えます。全体から受けた印象は静かです。

富士山の山肌は、最初は赤色だと思いました。しかし、少し見ていると、真っ赤というより茶色に近いようにも見えてきます。

山の上の方と下の方でも色が違っています。富士山そのものの色が、この作品で最も強く印象に残りました。

2. 最初に目が行ったのは赤茶色の富士山

最初に目が行ったのは、富士山の赤く見える部分でした。

一般的に思い浮かべる富士山とはかなり違う色です。しかも、山全体が同じ色ではありません。

一つの山の中で色が分かれているところが、今回この作品を見て好きだと思った部分でもあります。

山頂付近はさらに濃く見え、その下には赤色、あるいは茶色に見える山肌が広がっています。そして裾野へ目を移すと、今度は緑色に変わっていきます。

凱風快晴

3. 山頂と裾野が濃く見えるのが気になった

しばらく見ていると、富士山の色の違いがますます気になってきました。

特に不思議だったのは、山頂の方と裾野の方が濃く見えることです。

「実際の富士山でも、このような見え方をするのだろうか」

「中腹に日が当たっているのだろうか」

そんなことを考えながら見ていました。

もう一つ気になったのが、山の裾野付近の空です。画面上部は青いのですが、裾野近くでは白っぽく見えます。

そのため、まだ完全に明るくなっていない時間なのではないか、「明け方だろうか」と考えました。

凱風快晴

4. 富士山は本当にこのような色に見えるのだろうか

何も調べずに《凱風快晴》を見て、一番知りたくなったのは富士山の色についてでした。

本当に富士山が、このような赤色や茶色に見えることがあるのでしょうか。

また、山頂付近が濃く、中腹が明るく、裾野付近が再び濃く見えることにも理由があるのでしょうか。

裾野近くの空が白っぽいため明け方ではないかと思いましたが、実際にはどのような時間帯を描いた作品なのかも気になります。

そこで、《凱風快晴》について調べてみました。

5. 《凱風快晴》について調べてみた

《凱風快晴》は、葛飾北斎の代表的な風景版画シリーズ《冨嶽三十六景》の一図です。すみだ北斎美術館では天保2年(1831年)頃、メトロポリタン美術館では1830~1832年頃の制作としています。大判の多色木版画で、通称「赤富士」として知られています。

最初に疑問に思った赤い山肌についても、美術館の解説に手がかりがありました。

すみだ北斎美術館によると、夏から秋にかけての早朝、富士山が朝日を浴びて山肌を赤く染めることがあり、この作品はその現象を捉えたものと考えられています。同館は、山頂にはまだ薄暗さが残り、中腹では赤みが増していく様子が描かれていると説明しています。

作品名の「凱風」は南風を意味します。東京富士美術館も、この赤富士の光景を夏から秋の早朝に見られるものと説明しており、描かれた場所については諸説あるものの、河口湖付近から富士山の北側を見た可能性を紹介しています。

また、空に広がる雲について、東京富士美術館では「鰯雲」と説明しています。最初の鑑賞ではあまり意識していなかった部分ですが、後でもう一度見るときの手がかりになりそうです。

《冨嶽三十六景》は題名に「三十六」とありますが、好評を受けて追加制作され、最終的には46図となりました。メトロポリタン美術館も、当初の構想から46図へ拡張されたことを紹介しています。

色についても特徴があります。このシリーズでは当時日本に入ってきた「ベロリン藍(プルシアンブルー)」が使われました。大英博物館の《凱風快晴》の調査では、青空にプルシアンブルーが使われ、山の緑色部分にはプルシアンブルーと黄色の顔料を組み合わせていることが確認されています。

6. 作品について知ってから、もう一度見てみた

作品情報を読んだあと、もう一度《凱風快晴》を見てみました。

最初と見え方が変わったのは、山の中腹から上部にかけての陽の当たり方です。

最初にも「中腹に日が当たっているのだろうか」と考えていましたが、早朝の朝日を受けた富士山を描いたものだと知ってから見ると、山の色の違いと光の当たり方を結びつけて見るようになりました。

一方で、山の上半分が赤色で、下半分が緑色に見えるという最初の印象そのものは変わりませんでした。

また、もう一度見たときに新しく目に入ったのが雲の形です。

最初は富士山の色ばかりを見ていましたが、改めて見ると、細長い雲が空いっぱいに並んでいることが気になりました。

そして裾野については、最初に見たときよりも暗く感じるようになりました。

7. 「赤富士」には納得したが、裾野の暗さはまだ分からない

調べて一番「なるほど」と思ったのは、この作品が「赤富士」と呼ばれていることでした。

最初に何も知らずに見たときから、富士山の赤色や茶色に見える部分が一番気になっていたためです。

一方で、まだ腑に落ちていないところもあります。

朝日が左側から当たり、中腹から上の山肌が明るくなっているとしても、「それなら、なぜ裾野はこれほど暗く見えるのだろう」という疑問が残りました。

すみだ北斎美術館の解説では、山頂に薄暗さが残り、中腹が朝日によって赤みを増していくことは説明されていますが、裾野の暗さについてまで具体的に説明しているわけではありません。

そのため、この点については今回調べた範囲では、まだ自分の中で答えが出ていません。

8. 最後まで印象に残ったのは富士山の色の変化

作品について調べたからといって、《凱風快晴》を最初より好きになったわけではありません。好きかどうかという印象は、最初と変わりませんでした。

ただ、最後まで気になったのは、やはり山の色です。

赤い部分、緑色の部分、さらに濃く見える山頂や裾野。一つの富士山の中で色が変化しているところが、この作品の面白いところだと感じました。

最初に見たときには「二色の富士山」と感じましたが、調べたあとには、その色と朝の光との関係にも目を向けるようになりました。

9. まとめ|《凱風快晴》は山の色の変化が面白かった

葛飾北斎の《凱風快晴》を何も調べずに見たとき、最初に感じたのは「二色の富士山」でした。

赤茶色の山肌と緑色の裾野、山頂や裾野が濃く見えることが気になり、「本当に富士山はこのように見えるのだろうか」と疑問に思いました。

調べてみると、《凱風快晴》は「赤富士」と呼ばれ、早朝の朝日によって富士山が赤く見える現象を捉えたものと考えられていることが分かりました。

もう一度見ると、中腹から上部にかけての光の当たり方や、それまであまり見ていなかった雲の形にも目が向きました。一方、裾野がなぜこれほど暗く見えるのかという疑問は残っています。

作品について知る前と後で、好きかどうかは変わりませんでした。

最後に残った感想は、「山の色の変化が面白い」というものでした。

同じ作品でも、人によって最初に目に入る場所や、調べたあとに気になるところは違うかもしれません。気になった方は、《凱風快晴》の富士山の色をゆっくり眺めてみるのも面白いと思います。


作品・画像情報

作品名: 冨嶽三十六景 凱風快晴
作者: 葛飾北斎
制作年: 天保2年(1831年)頃 ※美術館により1830~1832年頃との表記あり
所蔵先: 木版画のため複数の摺りが現存。すみだ北斎美術館、メトロポリタン美術館、東京富士美術館、大英博物館などが所蔵。

画像素材:
「センペンバンカ 世界&日本の名画コンプリートセット Win&Mac版」収録画像

収録元:
センペンバンカ 日本の名画808

画像加工:
作品全体画像は縦横比を維持して掲載。
アイキャッチ画像・本文中の部分画像は必要に応じてトリミングして使用。

参考にした主な資料