ゴッホ《星月夜》を見た感想|不思議な渦巻きと、夜明けへ変わった空

星月夜 西洋の名画

前回に続いて、今回もゴッホの作品から選んでみました。

今回見たのは《星月夜》です。

この作品も有名な絵だと思いますが、まずは作品について何も調べず、絵だけを見てみることにしました。

最初に気になったのは、やはり空です。

普通の夜空とはかなり違って見えます。画面の真ん中あたりには大きな渦巻きのようなものがあり、星のまわりも丸く明るく描かれています。

まず自分の目で見て感じたことを記録し、そのあとで《星月夜》について調べ、もう一度作品を見てみました。

星月夜

1. 不思議な夜空と明るく浮かぶ星が印象に残った

最初に見たときに思ったのは、「空が不思議な状態になっている」ということでした。

全体は紺色が中心で、暗い印象です。その中に星が明るく描かれているので、星の部分がかなり目立ちます。

実際の夜空でも星は光っていますが、この絵では星の周囲まで丸く明るくなっています。

私は、この星の描き方は好きだと思いました。

一方で、左側に高く伸びている木は少し気になりました。

かなり大きく、画面の下から上へ伸びています。夜空や星を見ていた目が、この黒っぽい大きな形にも引かれます。

空、星、木という大きな形が、それぞれ強く目に入ってくる絵だと思いました。

2. 最初に目を引いたのは空の大きな渦巻き

最初に目が行ったのは、画面の真ん中あたりにある空の渦巻きです。

夜空なのですが、何かが大きく回っているように見えます。

雲なのか、風なのか、それとも別のものを表しているのか。この段階では分かりません。

星月夜

次に気になったのが星です。

星そのものだけではなく、その周囲が何重にも丸く明るく描かれています。

全体的には暗い紺色の画面なので、その明るさがさらに目立って見えました。

3. 見ているうちに気になった雲と風、星の明るさ

しばらく見ていると、最初に気になった渦巻き以外にも目が行くようになりました。

山の上あたりには白っぽい部分があります。

最初は、「これは雲なのだろうか」と思いました。

そして、空を横切るように続いている渦巻いた線については、「風を表しているのだろうか」と考えました。

もう一つ不思議だったのは、星の多さと明るさです。

これほど明るい星が一度にたくさん見えることがあるのだろうか、と気になりました。

実際に見た夜空をそのまま描いたものなのか、それともゴッホが何か手を加えて描いているのか。この時点では判断できませんでした。

左側の大きな木も、見れば見るほど存在感があります。

私は星の周囲を丸く明るく描いたところには惹かれましたが、この高く伸びた木については、あまり好きな部分ではありませんでした。

4. 空の大きな渦巻きは何を表しているのだろう

一番知りたくなったのは、やはり空にある大きな渦巻きです。

この渦巻きの正体は何なのでしょうか。

雲を描いたものなのか。それとも、風が流れている様子を線で表したのでしょうか。

山の近くにある白い部分についても、雲なのかどうか気になります。

また、星がかなり大きく、周囲まで明るく描かれているのも、実際に見えた空をそのまま描いた結果なのか、それともゴッホ独自の描き方なのか知りたくなりました。

そこで、《星月夜》について調べてみました。

5. 《星月夜》について調べて分かった明けの明星と空の渦巻き

《星月夜》は、フィンセント・ファン・ゴッホが1889年6月、南フランスのサン=レミで制作した油彩画です。大きさは73.7×92.1センチで、現在はニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵しています。

ゴッホはこの時期、サン=レミのサン=ポール=ド=モゾール療養院で生活していました。《星月夜》は、そこから見える風景を出発点にしていますが、見たものをそのまま写した絵ではありません。

MoMAによれば、画面下の村は実際に窓から見えた村ではなく、左側のイトスギも実際より近く配置されています。観察した景色に、記憶や構成を加えて作られた作品ということになります。

1. 明るく見えていた星は「明けの明星」だった

《星月夜》を制作する少し前、ゴッホは弟テオへの手紙に、日の出よりかなり前に窓から外を見て、「明けの明星」だけがとても大きく見えたと書いています。

書簡の注釈では、この明けの明星は金星だったとされています。

MoMAも、画面中央より少し左にある明るい天体を金星、つまり明けの明星として説明しています。星の周囲にある光の輪などは、実際の空をそのまま再現したものではなく、ゴッホが形や光を変えて描いています。

2. 気になっていた渦巻きは何なのか

最初に一番気になった空の渦巻きについても調べました。

MoMAの視覚解説では、空の中央にある明るい青色の帯は、横向きの「S」のようにうねり、激しい風を思わせる形として説明されています。

その下には、地平線に沿って明るい雲の帯も描かれています。

私が最初に「風を表しているのだろうか」「山の白い部分は雲なのだろうか」と思った部分と重なるところがあります。

ただし、大きな渦巻きそのものを「風を描いたもの」と断定できるわけではありません。

ゴッホ自身も、1889年6月18日ごろの弟テオへの手紙で「星空の新しい習作」に触れていますが、渦巻きが何を意味するのかまでは詳しく説明していません。

実際に観察した空があり、それをそのまま描くのではなく、形や色を変えながら一枚の絵に組み立てている。このことが《星月夜》を見るうえで大きな手がかりになりました。

6. 明けの明星を知って「夜が明けていく絵」に見えた

作品について調べてからもう一度見ると、一番変わったのは、この絵の「時間」の感じ方でした。

最初に見たときは暗い絵だと感じていました。

しかし、目立っていた星の一つが「明けの明星」、つまり金星だったと知ってから見ると、夜が更けていく景色というより、夜明けに向かっている景色に見えるようになりました。

最初は「だんだん暗くなっていく」ように見えていたものが、「だんだん明るくなっていく」ように変わったのです。

そのため、最初に感じたほど、この絵を暗く感じなくなりました。

星月夜

一方で、空の渦巻きを不思議に感じるところは変わりませんでした。

資料を読んで、実際に見た景色と想像や構成が組み合わされていることは分かりましたが、渦巻きを見たときの「これは何だろう」という感覚そのものは残っています。

もう一つ、二度目に見たときに新しく目に入ったのが、画面下の家です。

よく見ると、いくつかの家には黄色い灯りがついています。MoMAの視覚解説でも、家の中からの光を示す黄色い部分が描かれていることが確認できます。

最初は空や星、左側の木ばかりを見ていたため、家の灯りにはほとんど目が行っていませんでした。

7. 実際に見た風景と想像が組み合わされた《星月夜》

今回調べて「なるほど」と思ったのは、この作品には、ゴッホが実際に見たものと、そのままではない部分の両方が入っていることでした。

明けの明星のように実際の観察につながるものがある一方、村の配置やイトスギの距離、星の光や空の形などは組み替えられています。

そのことを知ると、「実際の夜空をそのまま描いたのだろうか」という最初の疑問には、少し答えが見えてきました。

ただ、渦巻きについては資料を読んでも「これが正体だ」と一つに決められるわけではありませんでした。

作品について知ったあとも、私にとっては不思議な部分のままです。

8. 暗い夜から夜明けへ、《星月夜》の見え方が変わった

今回、《星月夜》について調べる前と後で、一番変わったのは空の見え方でした。

最初は暗い夜の絵という印象が強く、時間もこれからさらに暗くなっていくように感じていました。

ところが、目立っている星が明けの明星だと知ってから見ると、反対に、これから少しずつ明るくなっていく景色に見えてきました。

そのため、最初ほど絵全体の暗さも感じなくなりました。

ただし、最初から気になっていた空の渦巻きについては、作品情報を知っても不思議に見えるところは変わりませんでした。

知識を入れたことで全部が分かったというより、同じ絵の時間の感じ方が変わった、というのが今回の鑑賞で一番大きかったところです。

まとめ

《星月夜》を何も調べずに見たとき、最初に目が行ったのは空の大きな渦巻きでした。

紺色を中心とした暗い画面の中で、丸く光る星も強く印象に残りました。

その後、作品について調べると、実際に見た景色だけではなく、記憶や構成を組み合わせて描かれていること、そして目立つ天体の一つが明けの明星であることを知りました。

もう一度作品を見ると、最初に感じていた「夜がだんだん暗くなっていく」という見え方から、「これから夜が明けて、だんだん明るくなっていく」という見え方に変わりました。

一方で、空の大きな渦巻きは、今でも不思議なままです。

作品について調べることで答えが分かることもあれば、知ったあとでも疑問として残るところもあるようです。

同じ作品でも、人によって目に入る場所や感じ方は違うかもしれません。気になった方は、《星月夜》の空だけでなく、画面下の小さな家や灯りまでゆっくり眺めてみるのも面白いと思います。


作品・画像情報

作品名:星月夜
作者:フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年:1889年6月
所蔵先:ニューヨーク近代美術館(MoMA)

画像素材:
「センペンバンカ 世界&日本の名画コンプリートセット Win&Mac版」収録画像

収録元:センペンバンカ 世界の名画606

画像加工:
作品全体画像は縦横比を維持して掲載。
アイキャッチ画像・本文中の部分画像は必要に応じてトリミングして使用。

参考にした主な資料

ニューヨーク近代美術館(MoMA)
《The Starry Night》作品ページ
制作年、サイズ、所蔵先、制作背景、実際の風景と構成の関係、金星について確認。
MoMA「The Starry Night」

ニューヨーク近代美術館(MoMA)
《The Starry Night》Audio Descriptions
空の渦巻き、雲、星の光、村、家の灯りなどを確認。
MoMA Audio Descriptions「The Starry Night」

Vincent van Gogh: The Letters
ゴッホから弟テオへの書簡777。日の出前に見た「明けの明星」と、その天体が金星であることを確認。
Van Gogh Letters 書簡777

Vincent van Gogh: The Letters
ゴッホから弟テオへの書簡782。「星空の新しい習作」への言及を確認。
Van Gogh Letters 書簡782