前回に続いて、今回もゴッホの作品から選びました。
作品は《夜のカフェテラス》です。
まずは作者や制作された時代について調べず、いつものように絵だけを眺めてみました。
最初に強く目に入ってきたのは、画面の中央あたりに広がる黄色い灯りです。夜の街を描いた作品なのですが、その黄色がとても明るく、最初に見たときには「まぶしい」と感じるほどでした。
今回は、まず何も知らずに見たときの印象を残し、その後で作品について調べ、もう一度同じ絵を眺めてみました。

1. 夜の風景なのに黄色い光がとても明るく見えた
最初に感じたのは、黄色い灯りの強さでした。
夜の風景なので全体的に暗い絵なのかと思いましたが、画面の左側から中央にかけて広がる黄色がかなり明るく見えます。
特にカフェと思われる場所の壁や店先が強い黄色になっていて、周囲の暗い建物との違いがはっきりしています。そのため、最初に絵を見たときには、街並みよりも先にこの明るい部分に目が行きました。
もう一つ印象に残ったのが、絵の奥行きです。
手前から奥へ空間が続いているように見え、思っていた以上に奥行きが深く感じられました。
黄色い場所だけを見るとかなり明るいのですが、その先には暗い建物が続いています。
「黄色くて明るい部分」と「暗い建物」が同じ画面の中に並んでいることも、気になったところでした。
2. 真っ先に目を引いたカフェテラスの黄色
最初に目が行ったのは、画面の中央付近にある黄色く見える灯りです。
壁やひさしの下だけでなく、その前の地面まで黄色っぽく見えます。夜の風景の中で、そこだけ強い光が集まっているように見えました。
私には、この黄色い灯りが少し異常なくらい明るく感じられます。
一方、そのすぐ先にある建物はかなり暗く描かれています。
黄色い場所がこれだけ明るいのであれば、周囲の建物ももう少し明るく見えるのではないか、ということも気になりました。

3. 暗くない夜空と不思議な形をした星
しばらく眺めていると、最初とは別のところにも目が行くようになりました。
その一つが空です。
夜の風景なのですが、空が思っていたほど暗くありません。濃い青ではありますが、真っ黒な夜空ではなく、かなり明るさのある青に見えます。
そして、そこに描かれている星の形も気になりました。
点のような星というより、いびつな形の周囲に光が広がっているような不思議な形をしています。

最初は黄色い灯りばかりを見ていましたが、長く見ていると、黄色いカフェ、暗い建物、青い夜空という色と明るさの違いが目立ってきました。
4. 夜のカフェには本当に人が集まっていたのだろうか
絵の中には、カフェの前に座っている人たちや、通りを歩いているように見える人たちが描かれています。
そこで気になったのが、この街では夜になっても人が集まり、こうしてカフェで過ごしていたのだろうか、ということです。
現在なら夜の飲食店に人が集まっている光景は珍しくありませんが、この絵が描かれた時代にも、このように夜に人のいる場所だったのでしょうか。
また、黄色い灯りがこれほど強く見えることや、夜空が黒ではなく青く見えること、不思議な形をした星についても気になります。
5. ゴッホは実際の夜のアルルでこの絵を描いていた
《夜のカフェテラス》は、フィンセント・ファン・ゴッホが南フランスのアルルで描いた作品です。
クレラー=ミュラー美術館では制作時期を1888年9月16日ごろとしており、油彩・キャンバス、80.7×65.3センチ。現在は同美術館の所蔵作品です。
1. 夜の現地で描いていた
描かれているのは、アルルのフォルム広場にあった「Grand Café du Forum」のテラスです。
ゴッホはこの夜景を昼間の記憶だけで描いたのではなく、実際に夜の現地で制作していました。クレラー=ミュラー美術館によると、ガス灯の光の下で、その場の色を見ながら描いています。
ゴッホ自身も妹ウィレミーンへの手紙で、この作品について、テラスに飲んでいる人々の姿があり、大きな黄色いランタンがテラスや建物、歩道、石畳まで照らしていると説明しています。
私が最初に気になった「夜でも人がいたのだろうか」という点については、少なくともゴッホが実際に夜の現地で制作し、テラスで飲んでいる人々を描いていたことが分かりました。
ただし、この作品だけから、当時のアルルの街全体がいつも夜遅くまで賑わっていた、とまでは言えません。
2. 黄色と青を強く対比させていた
黄色いテラスと暗い建物の違いにも、作品の特徴が表れています。
ゴッホは手紙の中で、黄色いランタンに照らされた場所と、青や紫色に見える家並みについて具体的に書いています。クレラー=ミュラー美術館も、黄色・緑・オレンジの暖かい色と、星空や建物の深い青との強い対比を、この作品の特徴として説明しています。
3. 「黒を使わない夜の絵」だった
夜空が思ったほど暗く見えなかったことについても、調べてみると興味深いことが分かりました。
ゴッホは妹への手紙で、この作品を「黒のない夜」の絵として説明しており、青、紫、緑などの色を使っています。クレラー=ミュラー美術館も、黒や灰色を主体とした従来の夜景ではなく、多くの色を使った夜景を描こうとしていたと解説しています。
4. 星は実際の夜空を観察して描かれていた
最初に不思議に感じた星についても調べました。
星がなぜあのような形に描かれているのかについては、今回確認した資料から明確な答えは見つかりませんでした。
ただ、星の位置には実際の夜空との関係があります。
クレラー=ミュラー美術館によると、後の研究から、描かれた星の配置は1888年9月16日または17日の夜に見えていた位置と一致するとされています。また、《夜のカフェテラス》はゴッホの作品に星空が現れた最初の絵と紹介されています。
6. 黄色のまぶしさが消え、ガス灯が見えるようになった
作品について調べたあと、もう一度最初から眺めてみました。
まず変わったのは、黄色の見え方です。
最初に見たときは「異常に明るい」「まぶしい」と感じていましたが、作品について知ってから見ると、以前ほど黄色をまぶしく感じなくなりました。
そして、最初は黄色い部分に目を奪われていたためか、はっきり意識していなかったガス灯そのものが見えるようになりました。
資料を読んでガス灯について知ったあとでは、「ここから黄色い光が出ているのか」と、光源の位置を確認するように見ることができました。
一方、夜空についての印象は変わりませんでした。
最初に感じた「夜なのに空が暗くない」という印象は、作品について調べたあとでも同じです。
もう一つ新しく目に入ったのが、カフェテラスの向かい側に並んでいる建物です。
改めて見ると、建物は3階建てになっています。
最初は黄色いテラスや空に目が行っていたため、この建物の高さまでは意識していませんでした。
7. 黒を使わない夜には納得、星の形にはまだ疑問
今回いちばん「なるほど」と思ったのは、ゴッホがこの作品を黒を使わない夜の絵として描いていたことです。
最初に見たときから「夜なのに暗い感じがしない」と思っていました。
作品について調べ、「黒を使わない夜」ということを知ったことで、暗く感じなかった理由の一つが分かったように思いました。
ただし、星についてはまだ腑に落ちないところがあります。
星の位置が実際の夜空と関係していることは分かりましたが、星そのものを拡大して見ると、私には隕石が光っているような形に見えます。
なぜこのような形に描いたのかについては、今回調べた範囲では分かりませんでした。
8. 最後に残った印象は「明るい夜」
作品について調べる前と後で、この絵を好きかどうかという評価は変わりませんでした。
ただ、最初に「まぶしい」と感じた黄色は、調べたあとではそれほどまぶしく感じなくなりました。
反対に、最初から感じていた「夜空が暗くない」という印象は、そのまま残りました。
黄色いテラス、青い空、暗い建物、そして夜にもかかわらず絵全体が真っ暗には見えないこと。
最後にもう一度作品全体を見て浮かんだのは、「明るい夜」という言葉でした。
まとめ
《夜のカフェテラス》を最初に見たとき、いちばん気になったのは、まぶしいほどの黄色い灯りでした。
しばらく見るうちに、暗くない青い夜空や不思議な形の星にも目が向きました。
その後、ゴッホが実際に夜の現地で制作していたことや、黒を使わずに夜を描いていたことを知ってから見直すと、黄色は以前ほどまぶしく感じなくなり、ガス灯そのものもはっきり意識するようになりました。
それでも、夜空が暗く見えないことや、星の不思議な形についての印象は残っています。
作品について知ることで全部が分かったわけではありませんが、最初と二度目では目に入る場所が少し変わりました。
同じ作品でも、人によって目に入る場所や感じ方は違うかもしれません。気になった方は、まず何も調べずに作品全体をゆっくり眺めてみるのも面白いと思います。
作品・画像情報
作品名:夜のカフェテラス(フォルム広場)
作者:フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年:1888年9月16日ごろ
所蔵先:クレラー=ミュラー美術館(オランダ)
画像素材:
「センペンバンカ 世界&日本の名画コンプリートセット Win&Mac版」収録画像
収録元:
センペンバンカ 世界の名画606
画像加工:
作品全体画像は縦横比を維持して掲載。
アイキャッチ画像・本文中の部分画像は必要に応じてトリミングして使用。
参考にした主な資料
クレラー=ミュラー美術館「Terrace of a Café at Night (Place du Forum)」
制作時期、サイズ、夜の現地制作、色彩、星の位置などを確認。
クレラー=ミュラー美術館 作品ページ
Vincent van Gogh Letters「Letter 678:To Willemien van Gogh」
黄色いランタン、青や紫の建物、黒を使わない夜景、テラスの人々、夜の現地制作について確認。
Vincent van Gogh Letters 書簡678
クレラー=ミュラー美術館「Van Gogh collection」
ゴッホ作品で最初の星空であることなどを確認。
クレラー=ミュラー美術館 Van Gogh collection

