モネ《睡蓮》を見た感想|もやに見えた水面が「反射」と知って変わった見え方

睡蓮 西洋の名画

モネは有名な画家ですし、《睡蓮》はその代表的な作品の一つだと思っていました。

ただ、作品について詳しく知っているわけではありません。

そこで今回は、まず作品について何も調べずに絵を見て、自分がどこに目を向け、何を感じるのかを確かめてみることにしました。

最初に気になったのは睡蓮そのものよりも、その周囲に広がる水面でした。

睡蓮

1. まず何も調べずに作品を見てみた

最初に絵を見たとき、水面にもやが掛かっているように見えました。

水を描いた絵なのですが、水面がくっきりと見える感じではありません。青や緑などが重なっているためでしょうか。水の表面を見ているはずなのに、その向こうにも何かがあるように見えます。

全体から受けた印象は「静寂」でした。

何か大きな動きが描かれているわけではなく、睡蓮が浮かぶ水面が画面いっぱいに広がっています。

ただ、その静かな風景の中で、水面がはっきりしないことが、かえって気になりました。

2. 最初に目が行ったところ

最初に目が行ったのは、画面中央あたりの、睡蓮がほとんど見えない水面です。

作品名が《睡蓮》なので、花や葉に最初に目が向きそうですが、私の場合はそうではありませんでした。

中央には青みのある広い水面があり、その部分がもやに包まれているように見えます。水を描いていることは分かるのですが、水面そのものがどこにあるのか、少し分かりにくく感じました。

一方で、画面の手前側に描かれている睡蓮はきれいだと思いました。特に下の方には、緑の葉の間に小さな花が見えます。

睡蓮

3. よく見ているうちに気になったこと

しばらく見ていると、今度は画面の上側が気になってきました。

上の方も水面なのだと思いますが、何か少し変わって見えます。

もやが掛かっているように見える部分がある一方で、緑色がかなりはっきりしているところもあります。

「もやが掛かっている」と考えると、その中にこれほどはっきりした緑が見えるのは少し不思議です。

さらに見ているうちに、手前側の水面にも、同じようなもやのような感じがあるように思えてきました。

では、そもそも私が「もや」に見えているものは何なのだろう、という疑問が出てきます。

睡蓮

4. この作品について知りたくなったこと

何も調べずに見ていて一番知りたくなったのは、

「なぜ水面が明瞭に見えないのだろう」

ということでした。

単純に水が濁っている様子を描いているのか。空や周囲の景色が水面に映っているのか。それとも、モネの描き方によってぼんやり見えているのでしょうか。

特に画面の上側には、もやのように見える部分と、緑がはっきり見える部分があります。

この違いにも何か理由があるのでしょうか。

そこで、ここから作品について調べてみることにしました。

5. 作品について調べてみた

今回の画像は、クロード・モネが1906年に制作した《Water Lilies(睡蓮)》です。油彩・キャンバスで、大きさは89.9×94.1センチ。現在はアメリカのシカゴ美術館に所蔵されています。右下には「Claude Monet 1906」と署名と年記があります。

1. モネがジヴェルニーに作った池

モネは1883年からフランスのジヴェルニーで暮らしました。1893年には自宅近くの土地に池を整備し、睡蓮を植えた水の庭を作っています。1899年には、その池を題材にした作品群の制作を始めました。

今回の1906年の《睡蓮》は、1903年から1908年にかけて制作された一連の水辺の作品に含まれます。この時期のモネは、池の岸や橋などを次第に画面から減らし、水面とそこへの映り込みを中心に描くようになっていました。

2. 「もや」に見えた部分には周囲が映っていた

シカゴ美術館の研究資料によると、この作品では、池の周囲の植物や空が、そのまま描かれているのではなく、水面に映った反射として描かれています

特に上部の緑色が目立つ部分には、周囲の植物の映り込みが含まれています。空も直接描かれるのではなく、水面への反射として見える構成です。

つまり、最初に私が「もやが掛かっているように見える」と感じたところには、水そのものだけでなく、水面に映った空や植物も重なっていたことになります。

3. 絵具も何層にも重ねられていた

この作品は、軽く描かれたように見えても、実際には何度も絵具を重ねながら制作されています。

シカゴ美術館の技術調査では、一部に8~9層ほどの絵具が確認されています。また、手前側の睡蓮については、最初は現在より多く描かれていましたが、その後、一部を水面の絵具で覆って構成を調整したことも分かっています。

水面、反射、睡蓮がはっきり線で区切られていないことも、最初に水面が分かりにくいと感じたことと関係していそうです。

6. 作品について知ってから、もう一度見てみた

作品について調べたあと、もう一度絵を見てみました。

一番変わったのは、水面の見え方です。

最初は、もやが掛かったような水面として見ていました。しかし、そこに池の周囲の植物や空が反射していると知ってから見ると、今度は絵の外にある池の周囲まで想像するようになりました。

また、最初に見たときは、水面が睡蓮よりも高い位置にあるように感じていました。

ところが、水面への反射だと分かってから見直すと、水面が以前より低い位置に感じられるようになりました。

一方で、変わらなかったところもあります。

手前側に見える睡蓮の緑がきれいだと思ったことは、作品について知ったあとも同じでした。

7. 調べて分かったことと、もう一度見て気づいたこと

今回、一番「なるほど」と思ったのは、周囲の景色が水面に反射しているということでした。

最初は、画面上部にある緑色について「もやの中なのに、なぜこんなにはっきり見えるのだろう」と不思議に思っていました。

周囲の植物が水面に映っていると分かると、その緑についても、最初とは違う見方ができるようになりました。

ただ作品の中に描かれているものを見るだけではなく、「この池の周囲には何があるのだろう」と、画面の外まで想像するようになったところが、調べる前との大きな違いでした。

8. この名画を見た最終的な感想

今回の《睡蓮》は、作品について調べる前より好きになりました。

最初は、もやが掛かっているように見える水面や、上側の少し変わった緑が気になっていました。

その後、水面には空や池の周囲の植物が反射していることを知りました。

それを踏まえてもう一度見ると、描かれていない池の周囲まで想像できるようになり、そのことがおもしろいと感じました。

睡蓮そのものを見るだけでなく、水面に何が映っているのかを考えながら見るところも、この作品の見方の一つなのだと思いました。

まとめ

モネの《睡蓮》を何も調べずに見たとき、私が最初に気になったのは、睡蓮よりも、もやが掛かったように見える水面でした。

調べてみると、この作品では空や池の周囲の植物が水面への反射として描かれていることが分かりました。

そのことを知ってからもう一度見ると、水面の位置の感じ方が変わり、さらに池の周囲まで想像するようになりました。

一方で、最初に感じた「睡蓮の緑がきれい」という印象は変わりませんでした。

今回は、作品について知ったことで、最初より《睡蓮》を好きになりました。

同じ作品でも、人によって最初に目に入るところや、調べたあとに変わる部分は違うかもしれません。気になった方は、睡蓮だけでなく、その周囲の水面もゆっくり眺めてみるとおもしろいと思います。


作品・画像情報

作品名: 睡蓮(Water Lilies)
作者: クロード・モネ
制作年: 1906年
所蔵先: シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)

画像素材:
「センペンバンカ 世界&日本の名画コンプリートセット Win&Mac版」収録画像

収録元:
センペンバンカ 世界の名画606

画像加工:
作品全体画像は縦横比を維持して掲載。
アイキャッチ画像・本文中の部分画像は必要に応じてトリミングして使用。

参考にした主な資料

シカゴ美術館「Monet Paintings and Drawings at the Art Institute of Chicago — Water Lilies, 1906」では、作品情報、1903~08年の《睡蓮》連作、水面への反射、技術調査について確認しました。
シカゴ美術館の作品研究ページ

メトロポリタン美術館では、1893年のジヴェルニーの池の整備と、1899年以降にモネが睡蓮を繰り返し題材にした経緯を確認しました。
メトロポリタン美術館「Bridge over a Pond of Water Lilies」