今回見てみたのは、クロード・モネの《印象・日の出》です。
前回に引き続き、『センペンバンカ 世界の名画606』の中からモネの作品を選びました。
この作品は、最初に縮小された画像を見たとき、何を描いている絵なのかよく分かりませんでした。
そこで今回は、作品について詳しく調べる前に、まず絵そのものをじっくり見てみることにしました。

1. かすんだ暗い景色の中で、赤い太陽が目に入った
最初に感じたのは、絵全体がかすんでいるということでした。
建物らしいものや船らしいものは見えるのですが、輪郭がはっきりせず、遠くの景色になるほどぼんやりしています。
全体としては暗い印象です。
一方で、その中に赤く丸い太陽が浮かんでいます。
太陽は比較的はっきり見えているのに、その周りはそれほど明るくありません。
太陽がこれだけ丸く見えるのであれば、もう少し明るくなっていてもよさそうに思いました。
「霧でもかかっているのだろうか」と気になりました。
2. ぼんやりした景色の中で目を引いた小舟と赤い太陽
最初に目が行ったのは、絵の中央より少し下に描かれている船でした。
周囲の景色がぼんやりしている中で、船とそこに乗っている人の姿は比較的分かりやすく見えます。
船は、こちらに向かってくるというより、陸から離れていくように見えました。
何をするための船なのかも気になります。

もう一つ目を引いたのが、赤く丸い太陽です。
今回この作品を見ていて、私が好きだと思ったのもこの太陽でした。
周囲が青や灰色に近い色でかすんでいるため、その中にある赤い丸がよく目立ちます。

3. 水面の細かな波と、かすんだ背景の煙突が気になった
少し長く見ていると、今度は水面が気になってきました。
最初は船や太陽の方に目が行っていましたが、その下を見ると、水面には細かな波が描かれています。太陽の下には赤みのある色も水面に続いています。
もう一つ気になったのが、背景に見える煙突です。
煙突からは煙のようなものが出ています。
朝の景色だとすると、工場のような施設がすでに動いているのでしょうか。
もともと景色全体がかすんで見えるため、霧なのか、煙なのか、それとも両方が混ざっているのか、この段階ではよく分かりませんでした。
4. 暗くかすんだ港と小舟について調べてみたくなった
作品を見ていて、いくつか確認してみたいことが出てきました。
まず気になったのは、なぜ太陽がはっきり丸く見えているのに、周囲はこれほど暗く、かすんでいるのかということです。
本当に霧の朝だったのでしょうか。
また、背景にある煙突から煙が出ているように見えるため、ここはどのような場所で、朝早くから何が行われていたのかも気になります。
そして、中央下に見える船です。
私には陸から離れていっているように見えましたが、何のための船なのでしょうか。
そこで、作品そのものについて調べてみることにしました。
5. 《印象・日の出》は霧にかすむル・アーヴル港の朝を描いた作品
《印象・日の出》(Impression, soleil levant)は、クロード・モネが1872年に描いた油彩画です。大きさは50×65センチで、現在はパリのマルモッタン・モネ美術館に所蔵されています。
描かれているのは、フランス北西部の港町ル・アーヴルです。モネは1872年11月ごろ、ホテル・ド・ラミローテの部屋から、早朝の港を南東方向に見て描きました。画面には埠頭や閘門、クレーン、煙突、船のマストなど、当時の工業港の風景が含まれています。
最初に「霧でもかかっているのだろうか」と思った点についても、美術館の解説には、クレーンや煙突、マストなどが秋の夜明けの霧や水蒸気の中に見えていることが説明されています。
背景で気になった煙突も、実際のル・アーヴル港の工業的な風景の一部でした。ただし、今回確認した資料では、それぞれの煙突が具体的に何の施設だったのか、あるいは朝早くからどの施設が稼働していたのかまでは確認できませんでした。
中央下に描かれた小舟について、マルモッタン・モネ美術館は手前の船を渡し船の小舟として説明しています。鮮やかなオレンジ色の太陽と水面の反射、小舟は、作品を仕上げる段階で加えられた部分とされています。
ただし、この小舟が画面の中でどこからどこへ向かっているのかまでは、資料からは分かりませんでした。
また、よく見ると背景にはクレーンがあります。右側は当時工事中だった埠頭で、左側には別の埠頭、中央には閘門が描かれています。ぼんやりした絵ではありますが、実際のル・アーヴル港をもとにした風景です。
《印象・日の出》は1874年、後に「第1回印象派展」と呼ばれる展覧会に出品されました。この題名などをもとに、批評家ルイ・ルロワが新しい絵画を皮肉って「印象派」という言葉を使いました。ただしオルセー美術館は、この一作品だけからすぐに「印象派」という名称が定着したと考えるのは単純すぎると説明しています。呼び名が広く定着するまでには、その後の経緯がありました。
6. 作品について知ると、見落としていた港の風景が見えてきた
作品について調べたあと、もう一度最初から見てみました。
最初に感じた「全体がかすんでいる」という印象は変わりませんでした。
一方で、最初にはほとんど意識していなかったクレーンが見えるようになりました。
工事中の埠頭とクレーンが描かれていると知ってから見ると、ぼんやりした背景の中にも、港の施設がいくつも描かれていることに気づきます。
もう一度水面を見ていると、工場のような建物が水面に映っているように見える部分にも目が行きました。
さらに奥を見ると、河や山のように見える形もあります。
最初に見たときは、中央の小舟と赤い太陽が強く目に入っていたため、こうした背景まではあまり見ていませんでした。
作品情報を知ったことで作品そのものの印象が大きく変わったというより、最初には見落としていたものが見えるようになったという変化でした。
7. クレーンの正体は分かったが、小舟の行き先は分からないまま残った
今回調べて「なるほど」と思ったのは、背景に見えていた形の一部が、工事中の埠頭とクレーンだったことです。
最初は景色全体がぼんやりしているため、それが何なのか分かりませんでした。
何が描かれているのかを知ってから見ると、クレーンの形を見つけることができました。
一方で、最初に気になった小舟については、渡し船の小舟だということまでは分かりましたが、まだ腑に落ちないところがあります。
私には、どうしても小舟が陸から離れていっているように見えます。
どこへ向かっている場面なのかについては、今回調べた資料からは分かりませんでした。
作品について調べればすべての疑問が解決するわけではない、というところも今回の鑑賞には残りました。
8. 印象は変わらなかったが、じっくり見るほど見えてくる絵だった
作品について調べてからもう一度見ましたが、最初より好きになった、あるいは逆に好きではなくなったという変化はありませんでした。
印象としては変わらないというのが正直なところです。
ただ、最初に見たときには気づかなかったクレーンや、水面に映っているものなどが、もう一度じっくり見ることで見えてきました。
今回最後に感じたのは、「じっくり見ないと見えてこない絵」だということです。
縮小画像で最初に見たときには、何の絵なのかさえよく分かりませんでした。
作品全体を見て、少し時間をかけ、さらに描かれた場所について知ってからもう一度見る。その過程で、最初には見えていなかったものが少しずつ目に入ってきました。
まとめ
モネの《印象・日の出》を最初に見たときは、全体がかすんでいて暗く、その中にある赤い太陽と中央の小舟が特に目に入りました。
「なぜ太陽が出ているのに暗いのか」「煙突は何なのか」「小舟は何をしているのか」という疑問から作品について調べると、描かれていたのは早朝のル・アーヴル港で、背景には工事中の埠頭やクレーンなどもあることが分かりました。
そしてもう一度見ると、最初には気づかなかったクレーンや、水面に映るものにも目が向くようになりました。
作品そのものへの好き嫌いは最初と変わりませんでしたが、「じっくり見ないと見えてこない絵」というのが今回の鑑賞を終えて残った感想です。
同じ作品でも、人によって最初に目に入る場所は違うかもしれません。気になった方は、赤い太陽だけでなく、かすんだ背景や水面までゆっくり眺めてみるのも面白いと思います。
作品・画像情報
作品名: 印象・日の出(Impression, soleil levant)
作者: クロード・モネ
制作年: 1872年
所蔵先: マルモッタン・モネ美術館(パリ)
画像素材:
「センペンバンカ 世界&日本の名画コンプリートセット Win&Mac版」収録画像
収録元:
センペンバンカ 世界の名画606
画像加工:
作品全体画像は縦横比を維持して掲載。
アイキャッチ画像・本文中の部分画像は必要に応じてトリミングして使用。
参考にした主な資料
Musée Marmottan Monet(マルモッタン・モネ美術館)
作品の制作年、大きさ、所蔵先、描かれた場所、霧やクレーン、煙突、小舟などを確認。
《Impression, soleil levant》作品情報
MuMa — Musée d’art moderne André Malraux(ル・アーヴル)
当時のル・アーヴル港、埠頭、閘門、クレーンなどを確認。
MuMa「Naissance d’un chef-d’œuvre」
Musée d’Orsay(オルセー美術館)
1874年の展覧会と「印象派」という名称の関係を確認。
「Paris 1874 Inventer l’impressionnisme」

